たんの吸引・経管栄養を介護職員が行える条件|老人ホームで確かめる登録と体制
たんの吸引と経管栄養は医療行為ですが、社会福祉士及び介護福祉士法により、実地研修を終えた介護福祉士と、研修を受けて都道府県の認定を受けた介護職員は、医師の指示の下で行えます。行えるのは、事業所が都道府県に登録している場合に限られ、大阪府は登録している事業者の一覧を公表しています。
この記事の要点
- 介護職員が行えるのは、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部のたんの吸引と、胃ろう・腸ろう・経鼻の経管栄養の5つの行為です。
- 口腔内と鼻腔内の吸引は咽頭の手前までが限度で、経管栄養の前には医師か看護職員による確認が必要です。
- 行えるのは、実地研修を終えた介護福祉士と、研修を受けて認定特定行為業務従事者の認定を受けた介護職員です。
- 職員が所属する事業所が、都道府県に「登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)」として登録している必要があります。
- 大阪府は登録事業者の一覧(高齢介護室所管分)をExcelで公表しています。重要事項説明書の「入居者の状況」と合わせて確かめます。
「入院先で、退院後は施設を探してくださいと言われた。たんの吸引が必要だと、どこも受け入れてくれないのでは」
たんの吸引や胃ろうの経管栄養が必要になると、施設探しの候補が一気に狭まったように感じる家族は少なくありません。実際には、看護職員だけでなく、条件を満たした介護職員もこれらの行為を行えます。その条件を知っておくと、施設に何を聞けばよいかがはっきりします。
この記事では、介護職員がたんの吸引と経管栄養を行える条件を法令と厚生労働省の資料で整理し、大阪府の公表資料を使って施設の体制を確かめる手順をまとめました。
堂島 健一のひとこと 特養の施設長をしていた立場から言うと、医療的ケアの受け入れは「看護師が何人いるか」だけでは決まりません。夜間や看護師が手薄な時間に誰が対応するのか、その職員が研修と登録の条件を満たしているのかで、受け入れられる範囲が変わります。
介護職員が行えるたんの吸引と経管栄養の範囲
介護職員が行えるのは、たんの吸引3つと経管栄養2つの、合わせて5つの行為です。社会福祉士及び介護福祉士法第2条第2項と、同法施行規則第1条で定められています。
行為 | 範囲の決まり(厚生労働省の資料による) |
|---|---|
口腔内のたんの吸引 | 咽頭の手前までが限度 |
鼻腔内のたんの吸引 | 咽頭の手前までが限度 |
気管カニューレ内部のたんの吸引 | 気管カニューレの内部 |
胃ろう・腸ろうによる経管栄養 | 実施の際に、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことを医師または看護職員が確認する |
経鼻経管栄養 | 実施の際に、栄養チューブが正確に胃の中に入っていることを医師または看護職員が確認する |
これらの行為は、医師の指示の下で行うものと定められています。厚生労働省の資料では、医師の指示、看護職員との連携と役割分担、計画書と報告書の作成、本人や家族への説明と同意を、提供の体制として示しています。
この制度は2012年4月1日に始まりました。それまでは、特別養護老人ホームなどで一定の条件の下に例外として認められていた行為を、法律で整理したものです。
行える職員の条件:介護福祉士と認定特定行為業務従事者
たんの吸引と経管栄養を行える介護職員は、次の2つのどちらかに当たる人です。
介護福祉士
介護福祉士は、養成課程でたんの吸引と経管栄養の知識と技術を学び、事業所で実地研修を終えると、行えるようになります。介護福祉士について制度が始まったのは2016年度からです。それより前に資格を取った介護福祉士も、一定の研修を受ければ行えます。
認定特定行為業務従事者
介護福祉士以外の介護職員は、都道府県または都道府県が登録した研修機関で「喀痰吸引等研修」を受け、都道府県から「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けると行えます。研修は対象と行為の範囲によって3つに分かれています。
研修 | 対象 | 行える行為(厚生労働省の資料による) |
|---|---|---|
第1号研修 | 不特定多数の人 | 5つの行為すべて |
第2号研修 | 不特定多数の人 | 気管カニューレ内部の吸引と経鼻経管栄養を除く行為 |
第3号研修 | 特定の人 | 対象となる人に必要な行為のみ |
老人ホームのように多くの入居者に行う場合は、第1号研修か第2号研修の修了者が対象です。認定証には、実地研修を終えて認定を受けた行為が書かれていて、その行為だけを行えます。
事業所の登録:登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)
介護職員がたんの吸引や経管栄養を行うには、職員の条件に加えて、職員が所属する事業所が都道府県知事に登録している必要があります。介護福祉士が行う事業所は「登録喀痰吸引等事業者」、認定特定行為業務従事者が行う事業所は「登録特定行為事業者」と呼ばれます。
登録の要件として、厚生労働省の資料は次の点を挙げています。
- 医師・看護職員などの医療関係者との連携を確保していること
- 記録の整備など、安全かつ適正に行うための措置をとっていること
- 介護福祉士が行う場合は、事業所で実地研修を行うこと
登録の対象になる事業所の例には、特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、有料老人ホーム、訪問介護などが挙がっています。医療機関は対象外です。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、介護は外部や併設の訪問介護事業所が行うのが基本です。この場合、登録が必要なのはホームではなく、実際にたんの吸引などを行う訪問介護事業所です。
大阪府の登録事業者一覧で確かめる手順
大阪府は、登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)の一覧を公表しています。施設が登録しているかどうかは、次の手順で確かめられます。
- 大阪府の「登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)・登録研修機関の一覧」のページを開きます。
- 「登録事業者一覧(高齢介護室所管分)」のExcelファイルを開きます。2026年11月6日の確認では、ページの更新日は2026年6月17日でした。
- 施設名、または住宅型有料老人ホームの場合は介護に入る訪問介護事業所の名前で検索します。
- 見つからないときは、障がい福祉室の所管分も確かめます。大阪府のページには、高齢者向けと障がい児者向けのサービスを両方行う事業者は、高齢介護室と障がい福祉室のどちらか一方に登録されていると書かれています。
一覧は公示として出されているもので、更新日の時点の登録状況です。一覧の更新のあとに登録した事業所は載っていないことがあるので、見つからないときは施設に直接確かめます。
堂島 健一のひとこと 登録があっても、夜間に研修を終えた職員が勤務しているとは限りません。研修を終えた職員が何人いて、夜勤のシフトに入っているかは、見学のときに聞いてください。答えが具体的な施設ほど、実際に対応している施設だと私は思います。
重要事項説明書と公表システムで受け入れの実績を見る
登録の有無に加えて、実際にたんの吸引や経管栄養が必要な人が暮らしているかを見ると、受け入れの実績が分かります。
- 重要事項説明書の「入居者の状況」:有料老人ホームの重要事項説明書の様式には、「喀痰吸引の必要な人/経管栄養の必要な人」の人数を書く欄があります。
- 介護サービス情報公表システムの加算の状況:介護付き有料老人ホームの「入居継続支援加算」は、たんの吸引などが必要な入居者が一定の割合以上いて、介護福祉士を一定数以上置いている施設が取る加算です。
人数の欄が空いていたり、加算がなかったりしても、受け入れていないとは限りません。数字は手がかりとして使い、最後は施設に直接聞いて確かめます。公表システムの使い方は「介護サービス情報公表システムの使い方」に、重要事項説明書の読み方は「有料老人ホームの重要事項説明書の読み方」にまとめています。
見学で施設に確かめること
たんの吸引や経管栄養が必要な人の施設を探すときは、見学で次の点を確かめます。
- たんの吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部のどれか)、経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻のどれか)のうち、対応できる行為はどれか。
- 看護職員がいない時間帯(夜間など)に、たんの吸引を行うのは誰か。研修を終えた介護職員は何人いて、夜勤に入っているか。
- 事業所の登録(登録喀痰吸引等事業者・登録特定行為事業者)はあるか。住宅型の場合は、どの訪問介護事業所が行うか。
- 医師の指示書や、計画書・報告書は、誰がどのように作るか。
- 状態が変わって対応できなくなった場合は、どうなるか。重要事項説明書の「契約の解除の内容」に何が書かれているか。
見学で聞くことの全体は、「老人ホーム見学のチェックリスト」にまとめています。介護施設探しノートでは、施設ごとのたんの吸引・経管栄養の受け入れを、施設の公式サイトと介護サービス情報公表システムで確かめられたものだけ載せ、「たんの吸引に対応」「胃ろう・経管栄養に対応」の一覧で地域ごとに確かめられるようにしていきます。
よくある質問
介護職員はたんの吸引を行えますか?
介護職員は、条件を満たせばたんの吸引を行えます。条件は、実地研修を終えた介護福祉士か、研修を受けて都道府県から認定を受けた介護職員であること、医師の指示の下で行うこと、所属する事業所が都道府県に登録していることです。口腔内と鼻腔内の吸引は、咽頭の手前までが限度です。
胃ろうの経管栄養は、介護職員でもできますか?
胃ろうの経管栄養は、条件を満たした介護職員も行えます。実施の際には、胃ろうの状態に問題がないことを医師または看護職員が確認する決まりです。経鼻経管栄養では、栄養チューブが正確に胃の中に入っていることを医師または看護職員が確認します。
施設がたんの吸引の登録をしているか、どこで確かめられますか?
大阪府の施設なら、大阪府が公表している「登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)」の一覧で確かめられます。高齢介護室の所管分がExcelで公開されていて、見つからないときは障がい福祉室の所管分も確かめます。一覧は更新日の時点の状況なので、最新の状況は施設に確かめます。
看護師がいれば、登録はいらないのですか?
看護師などの看護職員がたんの吸引や経管栄養を行う場合は、介護職員のための事業所の登録は関係しません。登録が必要になるのは、介護職員が行う場合です。夜間など看護職員がいない時間帯に介護職員が対応する施設では、事業所の登録と、研修を終えた職員の配置が必要です。
住宅型有料老人ホームでも、たんの吸引をしてもらえますか?
住宅型有料老人ホームでも、外部や併設の訪問介護事業所、訪問看護事業所と契約すれば、たんの吸引などを受けられる場合があります。介護職員が行う場合に登録が必要なのは、ホームではなく訪問介護事業所です。どの事業所が、どの時間帯に対応できるかを確かめます。
まとめ
たんの吸引と経管栄養は、実地研修を終えた介護福祉士と、研修を受けて都道府県の認定を受けた介護職員が、医師の指示の下で行えます。行えるのは5つの行為で、口腔内と鼻腔内の吸引は咽頭の手前までが限度です。
介護職員が行うには、事業所が都道府県に登録している必要があり、大阪府は登録事業者の一覧を公表しています。登録の一覧、重要事項説明書の「入居者の状況」、介護サービス情報公表システムの加算を手がかりにして、夜間に誰が対応するかを見学で確かめてください。
出典と確認日
- e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条第2項:2026年11月6日に確認
- e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」第1条:2026年11月6日に確認
- 厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度について」:2026年11月6日に確認
- 厚生労働省「今回の法改正で実施可能となった医行為の範囲」:2026年11月6日に確認
- 厚生労働省「喀痰吸引等研修~研修課程~」:2026年11月6日に確認
- 大阪府「喀痰吸引等(たんの吸引等)の制度について」(ページの更新日2025年10月20日):2026年11月6日に確認
- 大阪府「登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)・登録研修機関の一覧」(ページの更新日2026年6月17日):2026年11月6日に確認
- 宮城県「介護職員等による喀痰吸引等の制度について」:認定を受けた行為のみ実施できることの説明。2026年11月6日に確認